長野県松本市と岐阜県高山市は、一般国道の158号線で結ばれていますが、両県の県境にある安房峠道路(安房トンネル)は、中部縦貫自動車道になっており有料道路です。何度か行き来しているこの道ですが、今回は安房峠道路(安房トンネル)を利用せず、あえて国道158号線を選んだ場合、どんな景色が待っているのか、実際に走ってみました。
なお、本記事には2009年5月と6月、2011年10月に訪問した時の写真を掲載し、その後で最新情報を加筆しています。写真は長野県側からのものを必要最低限並べておりますので、時系列にはなっておりません。ご了承ください。

安房峠超えを国道158号線(旧道)で実際に走行してみた

長野県側から安房峠への上り口は、上高地へのマイカー規制の起点となる中の湯ゲートのある交差点を左折して間もなく、安房トンネルの手前を右折して山道に入ります。しかしこの交差点は信号機もありません。意識して走っていないと、そのまま安房トンネルへ突入してしまいそうでした。

安房峠へ向けて国道158号線(旧道)を走行中

安房峠へ向けて国道158号線(旧道)を走行中【撮影日:2011年10月10日】

山道に入ると、いきなりヘアピンカーブが待ち受けているのですが、それよりもまず、国道158号線にしてこの道幅です。対向車が来た時に備え、常に離合できそうなスペースを意識しながら走らなければいけない山道コースです。1997年に安房トンネルが完成するまでは、大型車もこの道路を通行していたのかと思うと、峠越えの苦労は想像を絶します。

安房峠へ向けて国道158号線(旧道)の8号カーブ付近

安房峠へ向けて国道158号線(旧道)の8号カーブ付近【撮影日:2011年10月10日】

しかし安房峠道路が開通している今、あえて便利な道を通らずに山道をドライブする目的なら、10月頃に訪れると紅葉景色を楽しめます。8号カーブ付近では、黄色く染まりかけた山が視界に広がりました。

安房峠の頂上付近にはかつて峠の茶屋が存在していた

安房峠の頂上付近にはかつて峠の茶屋が存在していた【撮影日:2011年10月10日】

さらに進み、安房峠の頂上付近に立つ、峠の茶屋に到着しました。この安房峠の茶屋は、安房峠道路の開通以後営業しておらず、その後、取り壊されてしまいました。

安房峠は長野県と岐阜県の県境

安房峠は長野県と岐阜県の県境【撮影日:2009年6月27日】

安房峠は長野県と岐阜県の県境。この時は初夏にも関わらず、乗鞍方面の山には冠雪が見られます。

安房峠から見た乗鞍方面の山には冠雪

安房峠から見た乗鞍方面の山には冠雪【撮影日:2009年6月27日】

さらに岐阜県側に進んでいくと、安房峠を記す看板が見つかり、そこには標高1780mと書かれていました。

安房峠は冬季通行止め、雨量による交通規制も

安房峠はゴールデンウィークも冬季通行止め【撮影日:2009年5月2日】

安房峠の冬は厳しく、冬季は通行止めになります。5月のゴールデンウイークに訪問した時、世間は春でも、安房にとってはまだまだ冬でした。安房峠の冬季通行止め期間は例年11月~5月頃。区間によっては少し時期も異なりますので、特に4.5月や11月に安房峠やその付近に行きたい場合は、道路状況の事前チェックが必須です。また、冬季以外でも、大雨などにより雨量が規定量を超えると、交通規制が実施されます。このような交通規制が発生した場合、無料の国道158号線を使うことはできませんので、必然的に有料の安房峠道路(安房トンネル)を使うことになります。

無料の国道158号線と有料の安房峠道路(安房トンネル)を比較

本記事で取り上げた安房峠を通る国道158号線と、有料の安房峠道路(安房トンネル)を、中の湯温泉入口交差点から平湯IC交差点の間における距離や所要時間、通行料金で比較してみました。

・安房峠を通る国道158号線

距離:約15.6km
所要時間:25~30分以上
通行料金:無料

・安房峠道路(安房トンネル)

距離;約5.6km
所要時間:約6分
制限速度:80km/h
通行料金:普通車910円(撮影当時は普通車750円)
※ETC割引あり

有料道路回避は節約になるのか

距離にして約3倍、時間にして4倍以上、そして山道を走る運転の労力を加味した上で、安房峠道路(安房トンネル)の通行料金を支払うかどうかですが、距離が10km違えばガソリン1L程度、余分に消費します。加えて、休日はETC割引が適用されることから、うまく活用することで、両者の差は埋まるか、安房峠道路(安房トンネル)の方がそれ以上の利用価値が生まれてくることになります。無料の国道158号線を走るなら、節約という観点ではなくドライブや観光目的ということなら楽しんで走れそうです。

国道158号線もこの区間は酷道扱い

ところで、この記事を書いていると、ふと石榑峠を思い出しました。
石榑峠の場合、旧道はコンクリートブロックのバリケードを設置して大型車の通行を禁止していたことや、峠道を回避するトンネルは無料道路で、旧道はその後に見舞われた災害により復旧を諦めて廃道になったことに安房峠と違いがありますが、安房峠も石榑峠もどちらも国道認定を受けるには程遠く、酷道と呼ばれるような道路事情です。

ただし安房峠は、これから先、石榑峠のように廃道にまでは至らないのではないかと、あくまでも勝手ながら予想しています。なぜなら、中部縦貫自動車道は現在、長野県松本市から岐阜県高山市を経由して、東海北陸自動車道の一部分を通りながら福井県福井市まで繋がる道路整備が進められています。自動車専用道路として計画されているこの区間において、一般道路を廃止するとは考えにくく、よほどの災害に見舞われたり過疎がが進まない限り、旧道も現在のまま運用され続けるかと思います。ただし、いつ突然廃道宣告されるかは予想できません。安房峠が気になる人は早めにドライブしておくことをおすすめいたします。